認知症の父、特養ホーム入所1か月「誰も来ない日はしょぼーん(´・ω・`)だよ」とつぶやく【ドキュメント母と娘「父の介護日記」】
母と子はこうしてだんだん疲弊する③
●「ここは頭がパーになって、ボケちゃったヤツばっかりだからな」
2018年4月23日(月)
例の「お父さんがかわいそう病」騒動の日。ネーヤはすっかり落ち着いた。自宅介護は無理だとわかった様子。でも、今後もまあちゃんは「家に帰りたい」「俺の気持ちがわかるか」と切ない言葉の連打を浴びせるだろう。「ホームに入れたのは、ネーヤのためと言ったけれど、実際にはまあちゃんの安全のために入れてるんだよ」と伝える。とにかくホームに入れて正解だった、とネーヤに思わせなければ。
2018年4月28日(土)
まず部屋を掃除。部屋に散乱するティッシュカスの謎が解けた。まあちゃんはウンコした後、トイレットペーパーをもむからだ。昔の便所紙のクセがよみがえったのか? イマドキのペーパーは異様に柔らかいし、もまなくてもいいのに。
天気がいいから歩かせたいが、まあちゃんが活発じゃない。あまりしゃべらないし。
「昨日来るって言ってたから、ずっと首を長くして待ってたんだぞ」と何度も何度も言われる。きっとまあちゃんは寂しいんだな。
「そろそろここも卒業しなきゃな」とも言う。
卒業、出所、とにかく出たいんだなと思う。
「風呂はいつもは火曜日か土曜日なんだ」という。午前中というが、午後のときもある。ただ、まあちゃんもなんとなく施設のシステムを把握し始めている様子。
目の前でまあちゃんが転倒した。頭や手を打つというよりは、足が踏ん張れなくなって、尻餅をついた形。後ろから抱きかかえて起こそうとしても、できず。ナースコールを押して、スタッフさんを呼ぶ。若い男性スタッフさんがヒョイッとまあちゃんを持ち上げる。支点・力点・作用点にコツがあるんだな。起き上がってから、血圧などもチェックして、念のために看護師を呼んでくれた。骨に異常はなさそうなので、ひと安心。転んだ本人も「イテテ」と言いつつも、みんながかまってくれるので嬉しそう。看護師さんにダジャレ言ったりして。血圧を心配したが、逆に108と低かった。私のほうが驚いて血圧上がったよ。
「潮は、今度はいつ来るんだ?」「昨日来ると思ってたのに来ないからがっかりだよ」
「誰も来ない日はがっかりしてしょぼーんだよ」を繰り返すまあちゃん。
「これからは訪問マッサージも入るし、機能訓練も入るよ」と言うと、「いや、家族が問題だよ」と。「私も頑張って来るようにするよ」と伝える。
うすうすだが、まあちゃんも私がここまで来るのがそこそこ大変だとわかっている様子。
「交通費はいくらかかるんだ? ここまでどれくらいの時間で来られるんだ?」と何度も聞く。
「片道1000円強、時間は1時間半だよ」と毎回答える。
そして、夕方。車椅子に座ったまま、窓の外を見て、ぼそっと「うちに帰りたい」と言う。「もう1か月ここにいる」と、正確に把握していたのには驚いた。
「ここにいる連中はみんな家に帰りたいって言ってる」
「ここは頭がパーになって、ボケちゃったヤツばっかりだからな」と言う。
それに対しては私も答えないで、さらっと受け流す。夕方になると、たそがれる傾向がある。他の入居者も同じようだ。夕暮れ時は心を切なくさせる。
2018年4月30日(月)【ネーヤ・記】
スタッフさんから「夜は2時間ごとにオムツを替えますが、最近ありがとうと言われるようになりました」とのこと。
私はまあちゃんと結婚して何十年も「ありがとう」と言われたことがないのに。腹が減ってないと言う割に出された食事はすべて完食。
昼食後に立ち上がらせたら、凄まじい悪臭! トイレに行くと大量の下痢便。ズボンにもついて気絶しそうなニオイ!
まいったぁ。
便のニオイには6年ほど前から慣れているはずなのに、いつまでもニオイが取れず、マスクの中までクサイのよ‼
聞いたら、昨日とおととい、下剤を飲ませたとのこと。下痢するの当たり前。立ち上がったときに、出たオシッコを自分の手で受けた夫。その手をベッドのシーツで拭いたので、ポカリと頭を叩いたよ。
(『親の介護をしないとダメですか?』より構成)
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